メタルギアサヴァイヴをクリアしました。
どんな感じのゲームかと言うと「異世界転移させられたら周りは人の姿をした化け物だらけ!この広大な大地を生き残れ!」という感じ。実際には異世界というか別次元と言われているんだけど
ストーリーと世界
「別次元に送られたから死力を尽くして生き残るぜ!」って内容。
別次元に送られる理由としては「先遣隊の調査データと、可能なら生存者の救出をしてこい」というもの。
その先では人の成れの果てワンダラーが待ち受け、生き残るために物資を集め、世界に流れ着いた漂流者を味方につけなければならない。
ゾンビサバイバルものとしては王道という感じだろうか。
私の個人的な感覚で言えばゾンビを取り扱う作品の大半は「ゾンビとの生存をかけた戦いと、数少ない生き残りによるヒューマンドラマ」をメインに扱っていると思う。
しかしメタルギアサヴァイヴは「サバイバルにおける物資のやりくりと施設のクラフト要素」をメインにしている。
ヒューマンドラマやゾンビとの戦いというのは期待してはいけない。
物語の軸は「元の世界に帰る」ということになるのだが、「帰るためには何をするべきなのか」というのが常に話の中心となる。生存者たちは「帰りたい」と嘆きはすれど対立することはなく主人公に協力的である。
ここら辺、MGSVがドロドロした人間の内面を描くハードカバーの小説だとすると、サヴァイヴは大団円を目的としたライトノベル感がある。
決してつまらないというわけじゃなくて、心理的にハードな場面は削ったと考えていいかも。事実、私は買ってから「先が気になる!」でクリアまで時間が許す限りぶっ通しだったし。
特に話のオチとしてはなんというか、先述の通りライトノベル的なオチではあったけれど
「あ、MGSVの素材を流用してたけど、その設定をここで活かすのね」という感じ。
素敵なオチだった。これに関しては本当にプレイして感じてもらいたいなぁ。
ただ、手放しで褒められる出来かと言われるとそうではない。全体的に見れば面白いと評価できるのだけど、細かい不満は生じる。
まず、登場人物に魅力がない。薄っぺらいというかなんというか、今までの作品であった「生きているキャラクター」という感じがない。キャラクターが持つ信念を感じないというか、「気づいたら仲間になって手助けしてくれてる」という感がどのキャラにもある。
人物描写がなく、物語に関わってくる主要なキャラクターが本当に「仲間になるために配置されたキャラ」という感覚が拭えない。そこに必然性がないからだろうか。ここら辺は悪い意味でライトノベル的だった。
問題の解決方法は「誰かが残した or 流れ着いてきたものが○○にあるから取ってこい」ということの繰り返しなのでそこには主人公たちの努力がないというか、いや生きるための努力とかそこに行くまでの努力はあるんだけど、肝心な部分で運が良かったねとしか言えない。
また、設定や伏線の回収はほとんどされているのだけれど、要所要所で投げやりな回収となっているのも頂けない。ワンダラーの正体とかも「え、それで解説終わり?」という感じだったし。
設定の回収が雑というか……。続編フラグを醸し出してるわけでもないんだから、もうちょっと丁寧にして欲しかったなぁ。
あと、PVで「ディーテ世界には次元を超えてあらゆる物が流れ着く」と言われてるとおり色々なものが漂流してくるのだけれど、その全てがMGSVにあったものなのは残念というか、設定とちぐはぐしている。
実際、主人公たちとは違う時代からも人・物が流れ着いてきていると本編中に語られているし、それに別次元であるディーテ世界の真相もアレなだけに、それらが描画されないのは手抜き感を否めない。
そこらへんに放置されている物資や、建物とかも全部MGSVで見たことあるもんなぁ……。
素材の流用はいいんだけど、流用しかないのはカンベンだ。
ちなみにメタルギア本史とは一切関わりがなく、あくまでパラレルである。メタルギアライジングはしっかりと繋がりのあるスピンオフだったけれど、こっちは設定と素材を流用した二次創作のような感じ。
ゲーム制作の背景にある政治的な要素は抜きにして、ストーリーは面白かった。
ゲームプレイ
ゲームエンジンはメタルギアソリッドVで使われたFOXエンジンを使用していて、グラも操作感もまるまるメタルギアソリッドVのような感じ。向こうとの大きな違いはメインが銃ではなくて刃物・鈍器であるということかな。
ただ銃を撃つ操作は同じだけど、そこにこもる気持ちは全然違う。あらゆるものをクラフトで用意するゲーム性な以上、銃をぶっ放す度に「あぁ、俺は今貴重なガンパウダーを撃っている!」という想いがでてくる。
まぁガンパウダー自体はそこまで貴重じゃないんだけど、しかしやっぱり気軽にぶっ放せるかと言われるとそうでもない程度には数が集まらない。この世は常に収集が基本なのだ。
難易度は高いと言えるが、理不尽というほど高いわけではないと最初に言っておく。
右も左もわからない土地に放り出された最初は、何が混じっているかわからない泥水をすすり、ネズミを必死に追いかけ、貧相な野生のニンジンを齧って飢えを凌ぐ生活が続く。
襲いかかるワンダラーはこれまたいつ壊れてもおかしくないような武器で必死に倒さなければならない。
スーパーマーケットもホームセンターもないこの世界で生きていくにはそれだけの覚悟が必要である。生きるって大変だ……!
攻撃を食らうと打撲や裂傷、出血などの怪我を負うこともある。これらは自然治癒を待ってもよいが、できるなら治療を施した方がよい。
慣れてくると「あぁハイハイ」と対応できるのだが、ゲームプレイ序盤はこれら考慮する要素が多すぎて忙しすぎないか?と感じた。
というか飢えや渇きに関しては満タンの状態から5分でバッドペナルティが発生するようになるので後半でも忙しい、というか手間。
発生までを長くして、ペナルティを大きくするとかでも良かったんじゃないかと思う。
ゲームは基本的に
ミッション発生 → 移動と探索 → 現地で戦闘 → 帰還
という流れになる。
ディーテ世界は主人公がいるベースキャンプの周辺以外は基本的に霧(というより塵)で覆われていて、この中だと視界が制限され、さらにボンベによる酸素が許す限りしか探索ができない。それ以上は死を招く。
無限に探索できるわけじゃないので、メリハリの効いた行動を心がけなければいけないし、敵を見かけてもステルス・突破・殲滅のどれかを選択しなければならない。
それらの行動は常に一択というわけじゃなくて、例えば有用な物資コンテナを開ける際はステルスしない限り殲滅しないといけないけど面倒。道中にたくさんの敵がいる場合はキリがないのでダッシュで突破、目的地の周りに敵がたくさんいる時はステルスが無理なので殲滅、という具合だ。
後半になると食料に困窮することはなくなっていく。狩猟最終生活は終わりを向かえ、主食はジャガイモを始めとする野菜・穀物となり、雨水から浄化した綺麗な水やミルクを飲む生活へ変わっていく。あのマッシュドポテトをもう一度味わえるのだ!
サバイバルとしての醍醐味である食料の確保がある程度楽になると難易度が落ちると思いきや、今度は敵が強くなっていく。
序盤こそゴリ押しで走り回ってもいいのだけれど、中盤を過ぎると地面に潜む敵、硬く素早く攻撃力の高い敵、硬くて遠距離から砲撃してくる敵と、ゴリ押しでは少々キツい敵が出てくるので自然とステルスプレイが中心となってくる。
ただ、地面に潜む敵は注意しないとすぐ引っかかる(面倒なことに足止め攻撃をしてくる)し、それ以外の新種は近接武器で対応することが難しい。
歯ごたえが出てくるというよりはただただ難易度があがるだけで面白さに繋がるかと言われると微妙。探索中じゃなくて、防衛モードででてくる分ならいいんだけどね。
ちなみに近接武器のカテゴリーは大まかに4つある。それぞれに一長一短の特徴がありどれが強いとは一概に言えない。強いていうならスラストウェポン(槍)が攻守ともに優れている印象はあるが、それ以外が弱いわけではないので好きなプレイスタイルを確立できるのは本作の魅力である。
そして本作のプレイを特徴付けるものとして、探索とサバイバル以外にもう一つ、タワーディフェンスがある。
メジャーなジャンルかと言われると微妙だから解説をすると、タワーディフェンスとはタワー(目標)へ向かってくる敵を足止め・撃破(ディフェンス)するゲームである。純粋なタワーディフェンスはアクションではなくRTS(リアルタイム戦術ゲーム)に近い。
本編中にも度々やらなければいけないし、CO-OPであるマルチプレイもこのモードがメインである(というよりマルチは現状このモードしかない。3月中に追加されるらしいが……)。
このモードでは敵が湧いてくる場所・進行ルートがわかるので、それに合わせてバリケード・トラップ・機銃・タレットなどを配置する必要がある。
最初は流れてくる敵をフェンスで抑え、攻撃を加えることで無双感を味わえるのだが、慣れてくると非常に単調に感じてくる。苦痛というほど退屈ではないが、しかし作業ゲー一歩手前といった感じ。むらがる敵を薙ぎ払っていくのは楽しいんだけどね。
ゲーム部分としては「最初はサバイバルのための採取が中心、後半は戦闘がメイン」と推移していく。
ただ、基本のザコ敵以外、強い敵との戦闘が面白いかは微妙であるため残念。
死なないためのサバイバルは面白いが、生き残るための戦闘はもう一つ工夫が欲しかった!
マルチプレイ
本作には前述したとおり、タワーディフェンスモードのマルチプレイが存在する。4人で協力してタワーを守れ!という内容のものだ。基本的には本編の同様のモードを強化したものとなっている。
クリアすると大量の物資やクラフトレシピが貰えて、その喜びもひとしお。
しかし残念ながらマルチプレイ自体は面白いとは言えない。
まずもって、本編のタワーディフェンスと内容がそう変わらないので非常に単調に感じる。敵が増えるとは言ってもプレイヤーも増えるため、よほど足を引っ張る味方がいない限りクリアは簡単である。
また、PvPではなくPvEという共闘モードであるにも関わらず、取る行動全てにスコアが付き、それによってプレイヤー間で順位が決められる。そして順位によって報酬も少しだけだが変化する。
つまりPvEであるにも関わらず常に競争が発生するのだ。
素材を集めるのも競争、サブミッションをクリアするのも競争、敵を倒すのも競争……。
そして共闘という名目だが、味方から恩恵を受ける点といえば自キャラがダウンした時に復活させてくれる時だけだ。それ以外での関わりは自分が倒している敵に横入りをされた時くらいだろうか。
一位を取るコツが如何に味方とともに戦わないかであり、全く共闘感がない。
PvPであれば終わったあとに「勝ったー!」「負けたけど惜しかったー!」と一喜一憂できるのだけれど、PvEで競争させられてもなぁ……。
残念ながら私にとってマルチプレイはそう面白いと言えない出来であった。
また、クリア報酬が多いというのは前述したが、本当に量が多く、シングルプレイと釣り合いが取れていないように思える。シングルでせっせこ物資を集めるくらいなら、マルチプレイで弾をケチりつつ物資を集めた方が効率が良いくらいだ。
シングルプレイとマルチプレイの物資は共通で、どちらか片方だけだと何かしらの物資が底を突くというバランスもあるが、マルチプレイの報酬はややインフレ気味とも言える。
ここら辺、まぜこぜにしたのは面白い試みだったと言えるが、しかし練りこみが足りなかったようにも感じた。
課金要素とエンドコンテンツ
このゲームにはアイテム課金要素があり、それらを購入することで少しだけゲームが楽になる。
これに関しては叩かれているところをちょいちょい見る。
私個人の感想を言っておくと、まず普通に楽しむぶんには課金を意識することもない。なくても普通に遊べるからだ。少なくともストーリーが終わるまでは。
本作はエンドコンテンツがあり、ストーリーが終わってもひたすらにやりこむことができる。
ただ、エンドコンテンツの目的は「自キャラを強化」であり、手段は「レベル上げ」「良い武器の取得」である。
一応、クリアしてからもサイドミッション(お使いクエスト)も発生するのだが、それは大して良いものが入ってないコンテナを開けてこいというもの。
基本的には「マルチプレイに篭って資材集め」か「シングルプレイの拠点を要塞化してタワーディフェンス」の2択になるだろう。
ただ、前者のマルチプレイはあまり魅力のあるコンテンツではない。
そして後者の防衛モードも、うーん……。
基本的にタワーディフェンスというのは敵が流れてくる通路や、配置する物の効果を考え、戦略的に要塞を作っていくものである。
しかしこのゲームの拠点は真四角で、全方位から敵が来る。つまり最終的には全方位にトラップとフェンスを置いてその後ろにタレットを置くという形になるだろう。戦略もなにもない。
拠点でのタワーディフェンスには幾つかに襲撃を区切るWave(よくわからない人にはラウンドととらえてほしい)が存在し、全てのWaveを終わらせることで報酬が素晴らしいものになる。
しかし問題があり、最初のWeveが終わって次に来るWaveがリアルタイム24時間後。そしてそれを短縮するには課金要素のコインが必要である。うーん……。
そういう終わりのない戦いに嫌気がさし、エンドコンテンツによるやりこみではなく、もう一度ストーリーをやりたくなったとしよう。
実はこのゲームにはストーリー中の取り返しのつかない要素として、隠しバッドエンディングがある。しかもそれにはトロフィーもついてくる。
それらを取りたくなったとき、あるいはもう一度ストーリーを見直したくなったとき。
「じゃあ最初からプレイするか……」となるとセーブデータ枠一つ1000円(ぶんのコイン)である。
それを買わないならせっかく育てたキャラを消すか、ログインで1日1回もらえる30円ぶんのコインをコツコツと貯めるしかない。
うーん……。
つまるところ、課金要素はエンディングを迎えた以降に初めて意識することになる程度には薄いのだが、ストーリークリア後もたくさん楽しみたい!と思うのなら課金をどうしても意識せざるを得ない。
このゲームの戦闘があまり面白いと感じなかった私には、エンドコンテンツに時間を費やし、追加でコインを購入するだけ魅力のあるコンテンツには思えなかった。
総評
ストーリーや序盤のサバイバル要素は面白いものの、エンドコンテンツが充足しているかと言われると微妙。さらにそのエンドコンテンツを課金要素という枷が引っ張る。
しかし課金要素があるとは言え、本編が終わるまで意識することはなく、本体価格も5000円台と昨今のゲームの中では抑えられている方なので一概に悪徳であるとは言えない。
(しかも今amazon覗いてみたらもっと安くなってた……)
私はストーリーが終わった瞬間にモチベーションが吹っ飛んでしまったが、しかしストーリーを追いかけることが帰宅してからの楽しみだったのは事実。
ストーリーで度々挟まれるタワーディフェンスも、ただひたすらお使いで歩き回されることへの清涼剤であったと言える。メリハリというか、緩急というか。
PVを見て少しでも魅力を感じたらプレイすることをオススメする。
決して手放しで褒めることができない本作ではあるが、しかし光る物があるのも事実であった。