『Will -素晴らしき世界-』のレビューです。なんだかんだ不満点を書きすぎた感はありますが、それほど熱が入るくらい面白い作品でした。
「神様、どうかお助けください……」世界中から届く、神様への願い。主人公の少女は、手紙のテキストを入れ替えることで運命を変えることができる神様。いくつもの絡み合う運命を組み替えて、人々を幸せに導くことができるでしょうか?
Will -素晴らしき世界- | Playism
システム
『Will -素晴らしき世界-』ではプレイヤーが神様となって多くの人物の運命を変えていくことになる。神様である願の元に手紙という形で助けが届く。
助けを求める手紙の文脈を入れ替えることで人々の行動を変え、運命を変えていくというもの。
手紙のエンドはSランク〜Cランク、それとバッドまで分けられていて、基本的にはSランクを目指していけば良い。
手紙の内容からすんなり正解がわかるものがあれば、別のバッドエンドを見ないと情報が足りないというものまであって中々考えさせられる。
話そのものとしては、中国の高校生と先生の話、ラテンアメリカから行方不明の姉を中国へ探しに来た弟の話、韓国の新入り&熟練刑事の話などがあり、それぞれの話は基本的には独立している。
独立していると言っても、例えば「ここで○○が死んだら後に△△の話に繋がらないんだよな〜」というのは多く、色んなところで繋がってるんだな〜と感じさせられる。
難易度はノーマルモードとインポッシブルモードの2種類。ノーマルモードでは攻略に当たって重要な文脈が赤く表示される。インポッシブルモードではヒント表示がないだけで、それ以外の違い、難易度によって到達するエンドが違うとかはないはず。
ただ、難易度はいつでも変更できるし、インポッシブルモードでもヒントは表示できるのでこの難易度選択が本当に必要なのかは疑問。まぁ些細なことだけど。
このシステムだけでも結構面白いものはあったものの、真に面白いのはその場その場で最善の道へ導かせるのは本当に正しいのか?という要素。高校生として正しいのは勉強だけど、そのために自分の夢などを犠牲にしていいのか?という感じ。
なので実はSランクエンドだけを選んでいくだけではなく、このキャラの最終的な幸せを願うならここはSランクではなくCランクを選ばなきゃいけない……ということがある。
そんなこんなで人々の幸せを願いながら選択肢を並び替えていくのだが、困ったことに悪い点が目立った。というか後半は結構ストレスを感じながらプレイしていた。ノベルゲーなのに……。
目立つ不満点
まず最初に感じた点としては、選択肢を並び替える要素について。これ、最終的には総当たりになる。というか前述した「別のバッドエンドを見ないと情報が足りない」要素がどうしても足を引っ張ってくる。なんなら結局別のバッドエンドを見てもよくわからんから適当に総当たり、というのも少なくない。
また、「これが正解でしょ!」と選択肢を並び替えても思った通りに動いてくれないというか、「それはこうなるからダメでーす」と後出しジャンケンされたように失敗することもあって、考えることを放棄して総当たりを試した方が早い場面が多々ある。
また、「このキャラの最終的な幸せを願うならここはSランクではなくCランクを選ばなきゃいけない」という要素も足を引っ張る。それの、つまりストーリー分岐に際してヒントがないため、結局全てのエンドを見るために総当たりするハメになった。
また、終盤になると理不尽に難易度の高い並び替えも増えてくる。モールス信号の並び替え、進行方向の並び変え(東西南北のどちらに進む)、暗証番号の並び替えとか。
この中で進行方向の並び替えは紙に書けば解けるものの、モールス信号は「これじゃ絶対どうにもならんだろ!」と言いたくなるようなものが答えだし、暗証番号の並び替えはかなり序盤の方に出すだけ出してたヒントを終盤に初めて使わなきゃいけないという記憶力が試される構成になる。
そう、つまりこのゲームはめちゃくちゃ不親切なのだ。
「オレンジ色の文字は攻略に関する大きなヒントとなることがあるため、見逃してはいけない。さて、今オレンジで装飾された文字はどんな順番に出てきたでしょうか?」という記憶力トレーニングみたいな要素が出てきたときは笑ってしまった。ちなみに間違えたらタイトル画面に戻される(直前のオートセーブがあるためさして問題ではないが……)。
とは言え、正解のルートにたどり着く面白さはきちんとある。総当たりとは言え、このキャラクターを救ったらどんな話に進むんだ……?!とかこのキャラクターは他にどんなバッドエンドを迎えるんだ……?というドキドキ感はたまらない。
不満点は多いが、この要素は実際に楽しかった。それだけは断言できる。
ストーリー
ストーリーは様々な人間が織りなす群像劇となっている。が、時間軸が一緒というわけではなく、「このキャラクターAの後半はキャラクターBの前半」というパターンもある。
話自体は例えば「女子高生と先生」はめちゃくちゃ絡むし、「新米刑事と熟練刑事」はめちゃくちゃ絡むけど、「女子高生と先生グループ」と「新米刑事と熟練刑事グループ」はほぼ絡まない。
見て、あなたが“テニスコートのライトが壊れた”を“路地のライトが壊れた”に変えたから、この女の子が真っ暗なコートで自宅の鍵をなくすことはなくなったワン。
この変化が及ぼす影響は、恐らくとても長い時間続くワン。そして、もしかしたら彼女の未来に大きな変化をもたらす可能性もあるワン。
こんな連鎖反応のことを、人間界では”バタフライエフェクト”と呼んでいるワン。
もちろん全く繋がってないというわけではなく、例えば女子高生の話を進めていくと男子高校生の話も進んでいき、結果未来の男子高校生は○○の事件に巻き込まれてそれが△△の話に絡んでくる……という感じに繋がっている。……繋がっているのだが、逆にいうとそれくらいしか絡みがない。
基本的に各話のバッドエンドは「そこで人生終了」みたいなパターンが多いため、「未来の男子高校生は○○の事件に巻き込まれてそれが△△の話に絡んでくる」という話は未来を変えた結果そうなってしまった!という感よりただ正規ルートを進んだらそういう話に繋がるのね〜という感しかない。
まぁシュタインズゲートのようなものは難しいのでしょうがないとは言える。むしろよくここまで互いの話を繋げられるもんだな、と思った。
このゲーム、中国産のゲームなのだが、日本語へのローカライズがすごい。少なくとも翻訳上では違和感は感じなかった(これ多分原文が悪いんだろうな……と感じたシーンはあった。プレイ済みの人のために具体的にいうと、東西南北のルートを選択する話での「十字路」の記述)。
ただ一つ問題があるとすれば、登場人物の読み方がわからん……!というところかな。
(あぁ、読み方わからんけどあのキャラね……)みたいなノリで常に読んでた。
個人的に最初から最後まで頭に残ってたのは主人公であり神様である願ちゃんだけだったのは惜しい。ジミー・カルロス・アリシアあたりの漢字以外で表記されてるキャラの話はすんなり読めたから、中国・韓国系キャラはカタカナにするかフリガナを多めに振ってくれという感はあった。
人を救うとは……?(微ネタバレ)
どの話を取っても面白かった!わくわくした!これだけは最初に断言しておきたい!とっても面白かった。
ただ、それでも不満点はある。ほとんどのキャラの終わり方がパッとしないのだ……。
いや、確かに各個人の最終的な目標は達成しているケースは多い。達成できなかったパターンもある時点でアレだが。
勘違いなきように言うと、私は別にハッピーエンド至上主義でも原理主義でもない。綺麗な終わり方であれば別に切なくても良いのだが……。
良い終わり方をしたと思うのは「女子高生と先生」と「男子高生」の話くらいで、それ以外はなんというか……。ビターエンドか、それ未満という感じ。「え、これで終わるのかよ?!」と感じた。
物語のネタバレになるので直球の言及は避けるが、例えば「果たしてこのサイコパスな奴が助けを求めてきたからと言って、サイコパスを助けて世間はハッピーになるのか?」というジレンマがある。
まぁ神様側の話として、トゥルーエンドにたどり着くにはそのサイコパスを助けてサイコパスにとってのハッピーエンドにたどり着かないといけないのだが、なんだかなぁ。
ラストの話
※ラストの話をするので当然ラストの展開について話します!結論の具体的な言及は避けますが、ネタバレが嫌な人は一度ページ上部に戻って目次から「総評」へ飛ぶことをお勧めします。
確かに、神様側の話のトゥルーエンドにたどり着けば人類は(相対的に、少なくとも現状より)ハッピーになれる。
しかしだからと言ってそのためにサイコパスを助けたり、各人の終わり方がビターエンドだったりするのは独善的すぎない?という感じはする。「Sランクエンドは独善的に、絶対的に良いエンド」→「でもその場その場でSランクを達成していっても、それで本当にその人は幸せになるの?」という流れがあってこれだからなぁ。
「人々の悩みを解決する」話だと思ってたら実際は「あるバタフライエフェクトを達成すれば人々は幸せになる」話だったので、それ目的で買ったら肩透かしを食らったという感じ。
まぁ確かにゲーム紹介文の「いくつもの絡み合う運命を組み替えて、人々を幸せに導くことができるでしょうか?」という要素は外してないけれども!問題はトゥルーエンドを達成しても「人々は(相対的に)幸せになりました」という感がないことなんだよなぁ。だって人々が不幸になったところをプレイヤーは見てないし。
RPGでいうなら「魔王を倒して人々を幸せにできるのか?!」という趣旨のゲームのエンドが「魔王を倒して人々は幸せになったけどヒロインは犠牲になりました」だった、という感じだろうか。プレイした側としてはそこに「魔王を倒した!世界は平和になって人々は幸せだー!」という喜びを感じない。
「決断や選択にパーフェクトな正解はなくても、選んだことそのものに必ず意味がある」という発言があるものの、手紙の文脈を入れ替えて人々の選択を入れ替えてきたのは神様ということを考えると……うーん。
物語の解決に至るための技術も「とにかくこれをすると解決するんだ!」とだけ言われて「なんでそうなるのか?」という説明もないまま終わった……という感じがして、全てがスッキリして終わったという感はなかった。雰囲気だけでラストを越えやがった……!という印象が残ったかな。
総評
手紙を入れ替えて人々の運命を変えていくというパズルゲームと融合した斬新なシステムに、先が気になるストーリーとインディーズゲームならではのピリリと光る要素はありつつも、システムの不親切さとストーリーとの矛盾が気になった。
しかし百点満点とは言わずともプレイが楽しかったのは事実だし、システムの不親切さにめげずに最後まで飽きずに進められたのは確実にストーリーが良かったからだと言える。
残念ながら万人ウケする内容ではないものの、PVなどを見たりして何かを感じたならプレイする価値は十分にあると思う作品だった。
同チームの新作が出たらきっと買うでしょう。
『Will -素晴らしき世界-』はNintendo Switchのほか、PS4とPC(Steam)でプレイが可能です。