パラノマサイトをプレイしたのでレビュー!ネタバレ込みなので注意!
プレイしている最中の感想が大きすぎて、どこからどう書けばいいかわからんので各パートごとに感じたことをおおよそ時系列順で書いていきます。
オカルト系調査ゲームが始まったと思ったらヒロインが死んで呪術バトルゲームになった興家編
可愛いヒロインとゆる〜く昔の東京を巡るゲームかな?と思ったらヒロインが死んだ上に主人公は理性飛んで殺人者になっとる……!な興家編。
そして始まる能力者バトル編。
そして死ぬ。
こいつ……主人公じゃなかったのか……?!
この後にルート分岐が解放され、ヒロインを生存ルートに移動させるとまた死ぬ……興家彰吾はまた死ぬッ……!
まぁヒロインの葉子も興家も、蘇りの秘薬を求める動機もペラペラなら紹介ページすらペラッペラなのでこいつらはメインを張る器じゃなかったのだろう……。
興家編が終わってしまえば、他の志岐間編・津詰編・逆崎編とプレイできるようになるが、なんというか興家くんの蚊帳の外感半端ないな……と思った。
死んだら蚊帳の外だし、生きてても蚊帳の外。悲しいチュートリアルキャラだった……。
死んだ息子の謎を追うマダム編
マダムこと志岐間春恵編。と同時に童心を忘れないプロタンを眺める回。
この人たちは警察と対立しつつ協力しつつ……と思ったら思ったより対立しなかった。普通に協力してた。でも裏切ろうとはしてたけど。
なんというかマダムという愛称が似合う貴婦人でプレイしてて楽しかったね。
志岐間は子を亡くした人、というより雰囲気的には未亡人、というイメージでプレイしてた。夫が出てこないしね。
顔芸がすごいというか、表情がすごい人だったけど、どれも感情を発露した時というか、圧巻の作画力を感じた。表情と感情が一致してるもん。
人を疑うことが苦手で、あやめとの対峙では直接「火って持ってる?」とか聞いちゃって可愛い。
ただその後、あやめがライターを捨てた後ライターで直接あやめの服に火をつけて呪詛行使する流れがあって思わずそのパワープレイと豪胆さには笑った。
他にもヒハク石鹸の弓岡の「既に呪詛玉を6個所持している」という言葉を信じた後「私ってなんて素直なの……」と自戒してた時はすごく人間性を感じた。
最初は息子の死の謎を追いつつ、漁夫の利で息子を蘇らせたい……!という感じで話が進んでいくけれど、最終的には「でもやっぱ人を殺すのはなぁ……」という形で降りるのは良い話だった。
襟尾くんと楽しい会話を楽しむおじ様を眺める津詰編
「警察視点か……他のキャラと違って、捜査とかから入る毛色の違うパートだな……」と思ってたらむしろこのパートが中心的になってて笑った。逆崎とか、試岐間とかもこっちに合流してからは事件に対する謎解明がメインになっていくしね。
興家編では強能力で強キャラ感を醸し出しつつ退場していった並垣くんだが、大人の津詰には手も足も出せず……
というか並垣くん、事故って人を轢き殺したあとに助手席の姫に誑かされて逃げて、秘術を求める動機も「轢き殺した事実」を無くしたいという、非常にしょうもない男だった。マジでこいつはしょうもない。
津詰警部の娘の話がでた当初、葉子が津詰警部の娘さんかな?と思ってた。けど灯野あやめって知って驚いた。
あやめはマダムと接触して譲ってくれよ〜とか言ってた時はまだちょっとアレなキャラだなという感じ。
「並垣とは遊んでいるだけ」みたいなことを言っていたときは「お、おう、遊んでるんだな……女子大生だな……」というくらいだった。
雲行きが怪しくなったのはその並垣くんが「あの女と一緒に女子高生(美智依ちゃん)を轢いた」と言い出したとき。あれ、ここからこの子を幸せにできるルートってあるんですか?
挙げ句の果てには「こいつ蘆乃の生まれ変わりじゃね?」と疑いが出るし……あれ、これから津詰警部が幸せになるルートってあるんですか……?
結果的には親の心子知らずというか、バッドエンドにしろ正規ルートにしろ津詰は死ぬんだけど、特にバッドエンドの方は感慨もなく生贄として殺されるというなんとも救いのないオチ。
どっちのルートにしろ擁護はできない、と言いたいが……(後述)
とにかくこのルートは津詰警部と襟尾の会話に救われた。
死んだ友の謎を追う逆崎編。呪いは謎を呼ぶばかり……
美智依ちゃんとか、修一くん(マダムの息子)とか、物語開始前に色々死んでて暗いな〜というのが最初の印象。
マダム編はしっとりした大人の因縁を追う回、津詰編はカッコいい大人が事件解決を目指す回、そしてこの高校生コンビ編は若人が若人らしい感じで自分たちの身近で起きた事件を追う回といった感じ。
この二人は不思議超能力系で、いかにも若いからにはこの要素でしょ?!って感じの雰囲気を感じた。マダムはしっとり大人サスペンスだし、津詰は硬派な刑事ドラマって感じ、なら高校生は超能力ものっしょ?!みたいな。
他の章でもそうだったけど、伏線の張り方と開示のタイミングが上手すぎてビビるよね。薄々もしかして……?と思ったときにドーン!みたいな。
この章だと約子に美智依ちゃんが乗り移ってるのとか、ちゃんと人物紹介読んでると約子のキャラ違うな〜?って思えるし。あとは葦宮の通名の件とか。
「またね」で忘れないであげて……って行動で示せ!→セーブとか、メタ要素でゲーム作ってるのも上手いと思った。ここはちょっとゲームシステムすぎて笑っちゃったけど。
最後にルート分岐でのバッドエンドだけど、ここ最初に見た時いきなりスタッフロール入ってマジで鳥肌立つくらいびびった。
時たま見せる黒鈴の笑顔が本当に嬉しかった。良い子なのに報われないことが多そうだから、約子ちゃんにはぜひ黒鈴を(友達として)幸せにしてあげてほしい。
生き様とは何かを見せつけてくれる蝶澤編
脱出ゲームみたいな構成の単話完結の話。最初は誰かわからないけど、話を進めていくと「あぁ〜〜〜このひとか〜〜〜顔カッコいい〜〜〜!」ってなった。
そして吉見が亡くなったことがわかったときは「蝶澤さんの生き方カッコよすぎ〜〜〜〜!!!!」ってなった。でっかいラブで死を受け入れているの、すごく良い。
夫と妻、という関係というよりは相棒とかパートナーとかの方がこの二人には似合うな〜って思う。
蝶澤編の話ではないけれど、この後に出てくる弓岡がマジで思ったよりしょうもない人間で笑った。
手元のゲームメモには並垣のことを(しょうもないやつ)ってメモってるけど、弓岡のところには(ヒハクのしょうもないやつ)ってメモってるくらいにはしょうもないやつだった。興家編でちょい役として出てきて、実際はすごい話のキーパーソンなのか?!と期待してたらマジでしょうもない小物。
婚約者の吉見さんを亡くしても悲嘆にくれず前に進むのはマジでかっこよかったし、その吉見も身の危険を感じて奥田に自分のお守りを託してるのもすごいファインプレー。そしてその奥田も吉見のことを信じてるが故になかなかお守りを他人に渡さないという、ツッパった生き方に対する美学が光る描写が個人的には刺さったね。
結末
津詰警部とあやめのやりとり→逆崎と津詰の相棒組である黒鈴ミヲと襟尾純によるお守り開封。
このルートだと津詰は娘のあやめに殺されるが……最後は泣いてくれたので津詰も幸せなんじゃないだろうか。
開封パートはここまで来たら謎解きも簡単な部類だと思う。というか今までの中で一番素直な謎解き。
謎を解いて「なるほど、これから睛曼の魂と肉体と精神を当てて解呪するんだな……!と思っていたら
葉子……お前何言ってるんだ……?
葉子……お前……
葉子〜〜〜〜〜!!!!!!!てめ〜〜〜〜〜〜〜!!!!
ってリアルになった。
もうひとつの結末
なんというか……こういうストーリーが分岐するやつでどうあがいても無理だ……!ってなった後に最初の最初に戻るのが正解っていうの、すごく熱いですよね……。すごく……良い……。
ただのチュートリアルキャラだと思っていた興家くん。だがその正体は土御門睛曼の血を引く俺の分身だったッ!
興家……お前が主人公だ……!
そういう訳でループもののように最初の時点でのどんでん返しを起こし、葉子が死ぬルートが正しいということで。
これで良かったんだ……!最初はヒロインが死んで悲しかったし、ヒロインを生かすと主人公っぽい興家くんが死ぬしで悲しかったが、葉子はヒロインじゃなかったからこれで良いんだ……! 既に前科一般だしなこいつ
そもそも葉子を生かしておくと最悪で300人と津詰警部が死に、最善でも黒鈴・襟尾が死ぬ……!津詰警部はどのみち死ぬ……! でもよく考えたらマダム勝ち残りなら津詰警部は生き残れる。頑張れマダム……!
でも今までの旅路は無かったことになって、黒鈴ミヲちゃんの笑顔も無くなるのか〜と考えたらちょっと寂しいこともあったけど、でも無駄ではないんだよな。みんなが努力したおかげで睛曼ことワイの記憶も蘇って大逆転解呪ルートも切り開けたわけだし。
興家くんは急に主人公の顔になったけど、私の分身としてこれからの世を良い方向に持っていってほしい。
他のキャラだとスッキリ解決したのは約子と美智依の話だけとなっている。この若者たちには未来をスッキリ生きていって欲しい。
マダムに関しては息子の死の謎を突き止めた先が描写されていないが、そういう意味ではエンディングの
どんな世界にも いかなる時代にも 蘇りの秘術なんて……ありはしない。
だから今、そこにある命を携え、ただ 一歩一歩 踏みしめていってほしい……。
という言葉が当てはまるんじゃないだろうか。最初から最後まで蘇りの秘術を追い求めていた人だしね。仮にマダムが目の前に居たらこんなことは言えないが、やっぱり受け入れて前に進むしかないよね。
そういうと、灯野あやねも最後まで蘇りの秘術を求めていた。
葛飾北斎という自分とは関係のない人物の復活を追い求めていたが、しかし彼女の生きる上での拠り所ではあったらしい。マジでガチで、追い求める気持ちはバカにできないものだった。
通常の<結末>の方では「お前は津詰家の長女、津詰あやねだ!」と父親の最後の言葉に泣き出して呪詛玉を放棄した。
呪詛玉にはやっぱ人を狂わす何かがあって、<もうひとつの結末>の様子を見る限り素の彼女はちょっと親が嫌いな夜遊びする女子大生、くらいのもんなんだと思う。
<もうひとつの結末>では呪詛関連のことがなかったことになっているので、父親である津詰徹生との関わりは起きない。でも<結末>で父親を殺したことを後悔してたくらいなので、きちんと話し合えば二人は和解できるはず。
和解しているかはぼやかされた表現だったけど、和解してないとしても後には和解できるような、そんな希望のある『結末』じゃないかなと思う。
まとめの感想!
クリア時間は9時間30分。濃密な9時間だった……。
なんというか……すごいゲームだ……。短いながらもすごい完成度。
「すごいノベルゲームをプレイした」というよりも「パラノマサイトをプレイしたんだな……」という余韻が強い。一つ一つは今までどこかで見たことのある要素だったけど、全て俯瞰して見るとやっぱり独特の構成になってる。
音声なんてないのに『足洗い屋敷』の呪詛を阻止するためだけに存在する『ボイス音量』の設定。
セーブなんて必要ないのに、美智依のことを忘れないためにある『セーブ』。
他の人物と行き来して知らないはずの情報で脱出する蝶澤編『幽暗』。
そして謎の俯瞰視点である『案内人』
やたらとメタ的な部分が多いな〜という感じがずっと付き纏っていた。
それでも最後に、最初に聞かれておきながらそれ以降ずっと触れられてなかった自分の名前を入力した時に全てはこのためにあったのか〜〜〜!!と激震と快感が走った。
これはマジでプレイした人じゃないと味わえない快感だと思う。
そこも含めて、伏線とその回収がプレイヤーが気付けるギリギリの範囲に収められててプレイしてて気持ちよかった。
興家くんも呪影の謎とか、そもそもなぜまだ持っていない置いてけ堀の能力で葉子が死んだのか、『送り提灯』とか蝶澤が持ってきただけで能力行使する場面一度もないし地味すぎないか……?とか考えた瞬間に「あああぁぁぁぁ〜〜〜!!!」と電流が走るように気付けたし。
伏線がちゃんと、プレイヤー自身の手で気付けるようになってるって本当に気持ちが良い。
あとは最後、全てがハッピーエンドになるわけでもなかったけど……このゲームのテーマ的には綺麗に終わったんじゃないかと思う。
このゲームのテーマといえば、私が受け止めるところによると蘇りの秘術に尽きる。
「もし誰かを蘇らせることができるなら?」という案内人が最初に聞いてきた質問こそこのゲームのテーマで、その答えが 「そんなものはないから丁寧に生きろよ」だろう。
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