以下の記事を読んで、純粋に「なんでこんな悲惨なことになる率が高いんだ……?」と疑問に思ったので調べて見ました。
結構深く調べたし、時間もかけたのでせっかくなのでまとめました。
最初に(読んでほしい)
この記事は純粋な興味本位で調べたことを、個人的にまとめたものです。わかりやすさを重視しているので、正確さなどは他に譲ることとし、正確さを保証しません。
また、一切の政治的意図を含みません。この記事に政治的意図はありませんし、政治的な意見表明に使用・利用するのはやめてください。
なぜ、大統領が悲惨なことになるのか。おおよその要約
- 伝統的に、大統領本人がやらかすか、本人じゃなくても親族がやらかす
- 大統領が退任する頃には非常に支持率が低くなっており、新しく任命された大統領は「前政権とは違うんだ!」ということをアピールするために前任の大統領の悪行を調査・公表しだす
- そして最終的にはまた大統領がやらかすか、親族がやらかす。
基本的にはこの流れ。
ではなぜ本人 / 親族がやらかすのか?それは以下の点を抑えておく必要がある。
- 戦時下であること(特に5代目大統領:全斗煥くらいまではこの色が強い)
- 韓国は儒教文化で、年功序列が強く、「近くの他人より遠くの親族」という国民性であること(コネ文化が強い)
- 大統領制であること
全斗煥時代くらいまでは朝鮮戦争の影響が色濃く、戦争に反対する民衆を抑えつけるために独裁・弾圧を行うことが多く見受けられる。
今の韓国の若者世代にとって北朝鮮とは『民族こそ同じだが全く異なる国』という認識だが、第二次世界大戦直後は『日本統治のゴタゴタのせいで国が別れちゃった同胞』という認識が強い(というかまさしく、南北で家族・親戚が分断されたので、統一を求める声は大きかった)
世代を経るにつれ、また6代目大統領『盧泰愚』が南北基本同意書を結んだあたりからは民主化が進む。
そのあたりから戦時下のせいで発生していた独裁・弾圧はなくなるが、その独裁に向いていたエネルギーが汚職に向かう印象。
特に儒教文化と大統領制の噛み合わせが最悪で、大統領に選出された人間に権力が集まる + 身内を大事にする(優遇する)文化のせいでかなり政権が独裁寄りになったり、そうでなくとも親戚が政治に絡んできたり、権力の恩恵を甘受しだしたりする。
言い方を変えると「コネ文化が相当強い国で、大統領の親族というコネが回り始めちゃう」。
また、儒教文化のせいで権力を得ちゃったら好き放題やれる!という開放感もあるような気がする。〜1990年くらいの大統領は結構好き放題の軍事的独裁で、それ以降はスキャンダル・贈賄が目立つ。
歴代大統領
ここから歴代大統領を紹介していく。(間接あるいは直接の)選挙で大統領になったものを挙げ、一時的に代行を務めたもの等は除外する。
情勢がわかりやすいようにウケたこと、ウケなかったことも記載していますが、これは日本人的にわかりやすいトピックを、韓国内の感情でウケたかウケなかったかを記載しています。(韓国で一番活発なwiki、namuwikiと、後述の『大統領を殺す国 韓国』をかなり参照しています)
【初代】李承晩 / イ・スンマン
- 任期:1948〜1960年(約12年)
- どんな人?:初代大統領で、建国の父。韓国内での評価は低い。
- ウケたこと:建国した。日本を嫌った。
- ウケなかったこと:日本を嫌いすぎて国交を結ばなかったせいで賠償金を得られず経済が低迷した。朝鮮戦争において敗走したり、まだ戦ってる軍を見捨てたりした。好き放題しすぎた。
- やらかしたこと:得票率97%の不正選挙
- その後:アメリカへ亡命
漢読みは「り・しょうばん」。建国の父。
この時期の政治家あるあるとして、混沌とした世界大戦期を海外で過ごしてたりする(教育はアメリカ・妻はオーストラリア人)のでその点で国内からは「あいつ真の愛国者じゃなくね?」という評価も。
反共産主義が非常に色濃く、かなりの反北朝鮮。韓国の外交スタンスは親米・反日という感じだがその礎は李承晩によって築かれた(親米 … 朝鮮戦争でアメリカに助けてもらったので / 反日 … 日本に支配されてたのを非常に嫌ったため)
ちなみに参考として、この時の北朝鮮は極端な反日というわけでもなく、太平洋戦争終戦後には日本と交渉し在日朝鮮人の帰国政策を行ってたりする。李承晩政権ではそんなことはなかった(うえに帰還阻止作戦として日本に爆破テロを起こしかけた)。
この極端な反日思想だったり、朝鮮戦争での敗走とその後(「北進統一」発言)だったりで韓国内での評価は低い。
※ 北進統一 … 「北に進軍して朝鮮を統一するぞ!」という趣旨。ボロ負けしたお前が言うな的目線を向けられた。
生涯大統領を望んでいたが、望みすぎてライバルが病気療養で渡米した瞬間に慣例を破って早期選挙を行ったり、挙句には不正選挙を行ったりした。結果、学生運動の末にアメリカに亡命した。
- 不正選挙としてやったこと一覧
- 選挙行かなかった人の名前を使って勝手に投票した
- 架空の人・亡くなってる人の名前で投票した
- 野党の立会人を追い出して憲兵とか警察とか使った
- 集団で与党の腕章をつけた人間を配置して圧をかけた
- 3人組 / 9人組編成で投票させ、互いに与党への投票を監視させた
【2代目】尹潽善 / ユン・ボソン
- 任期:1960〜1962年(約1年半)
- どんな人?:李承晩の後に大統領になったけど、割と早めに政権が維持できずに崩壊しちゃったので存在感は薄い
- ウケたこと:民主的で道徳的だった
- ウケなかったこと:民主的で道徳的なのに、その後に起きたクーデターを承認しちゃったこと
- やらかしたこと:5・16軍事クーデターを起こさせちゃったこと
- その後:クーデターにより辞任したが、ぼちぼち政治家として活動した。1990年死去。92歳没。
影が薄い代わりに、あんまり悲惨なことにもなっていない稀有な大統領。ただ、後述するが別件で実刑を受けた。
在任中に5・16軍事クーデターが起こり、退任。
原因としては「ちょっと能力がなくて何もできなかった」からと「朝鮮統一を目指す学生運動が過激すぎて軍があっぷあっぷしちゃった」こと
ただクーデターを起こされちゃったものの、クーデターそのものはそこまで過激じゃなかったのでしばらくは大統領に留まり、その後任期満了前に辞任。
辞任後もぼちぼち政治家として活動した。
その後、軍事政権が強い中、後述の金大中(民主化運動を進めた人)と仲良くしちゃったせいで反政府勢力と見なされ実刑判決を受けたりもした。
【3代目】朴正煕 / パク・チョンヒ
- 任期:1963〜1979年(約16年)
- どんな人?:5・16軍事クーデターを起こした人
- ウケたこと:李承晩がやらなかった日本との国交正常化を行い、賠償金を受け取って高度経済成長を実現させた
- ウケなかったこと:日本と国交を結んだこと(反日的感情)。アメリカ軍に撤退してほしくなくて多数の賄賂を送ったこと(→コリアゲート事件)
- やらかしたこと:あんまりにも独裁すぎて弾圧を行ないすぎた
- 最後:デモ弾圧への方向性の違いによって側近によって射殺
経済に対する評価は高いが、弾圧があまりにも過激すぎたので韓国内でも評価が分かれる大統領。ちなみに後の初の女性大統領である朴槿恵(パク・クネ)の実父でもある。
日韓基本条約を制定し、日本から戦後賠償金を受け取り、それによって韓国の経済を押し上げることに成功した(→漢江の奇跡)
ただ、政治スタンスとしてはあまりにも反北朝鮮・反共産主義すぎて国内の共産主義者やスパイを強く取り締まった。なお、国内の共産主義者やスパイとは政府を脅かす可能性を持つものであり、 民主化運動は国内弱体化を図る北朝鮮の陰謀であるとする。
また、日韓基本条約を結んだので親日か?と批判を受けたもののそんなことはなく、民主化運動を主導する金大中(キム・デジュン、後の8代目大統領)を日本から拉致したり(*)民主化運動を取材してた日本人ジャーナリストを逮捕してたりするので親日というわけでは全くない。
* … これはKCIA (韓国中央情報部…まさしく韓国版CIA)がやったこととされているが、そもそも朴正煕は軍事クーデターを起こした将校ということもあって軍との繋がりが強い。当然KCIAとの繋がりも強いので……。
ちなみに金大中が日本にいたのもKCIAに暗殺されかけてたからだったりする。また、拉致関連でついでに言うと東ドイツ在住の韓国人を拉致したりもするなど、かなり強行的。
最期は自身の右腕であるKCIA部長に酒の席で、左腕である大統領警護室長と一緒に射殺される。理由はデモ弾圧における対応策で自身の策ではなく、大統領警護室長の案が採用されたからだとされる(全容は未解明)
【4代目】崔圭夏 / チェ・ギュハ
- 任期:1979年12月〜1980年8月(約8ヶ月)
- どんな人?:前任の朴正煕大統領のもとで首相を務めてた人
- ウケたこと:軍部上がりの朴正煕と違って文民だったこと
- ウケなかったこと:軍部の更なるクーデターを抑えられなかったこと
- やらかしたこと:な〜んもできんかった
- その後:クーデターが起きて辞任するも、何もできなかったせいで悲惨なことも起きてない。2006年87歳で心不全にて没。
8ヶ月間しか在任期間がない悲運の大統領。なぜそうなったかは前と後の流れが重要になる。
- 前述のKCIA部長による大統領射殺に続き、軍部がクーデターを起こす(→粛軍クーデター)
- しかしさらに軍の若手将校によってカウンタークーデターが勃発する(後の5代目大統領・全斗煥が主導)
- その首謀者である全斗煥の要請で(本項目の)崔圭夏が大統領に就任する(そのため実質的には全斗煥の傀儡に近い)
- 全斗煥としては自分が大統領になるまでの、朴正煕の次の大統領としての繋ぎでしかなかった。
- その後、全斗煥が再度クーデターを起こししため、辞任を余儀なくされる。全斗煥が5代目大統領に就任する
こんな感じなので、就任と退任はそれぞれ自分の意思ではない。韓国内では「悲運の大統領」として扱われている。
一応、色々あって刑事告発されたものの起訴猶予で留まっている。後述の文在寅とともに数少ない、大統領を務めながらも災難を逃れた人。
【5代目】全斗煥 / チョン・ドゥファン
- 任期:1980〜1988年(約8年)
- どんな人?:朴正煕の流れを汲むバリバリ軍部系独裁者
- ウケたこと:日米韓の連携を強化し、不況の中で日本から援助を引き出し、景気悪化に歯止めをかけた。ソウルオリンピックを誘致し、ボイコットが相次ぐ東西諸国を参加させた。朝鮮戦争で離散してしまった家族の再会事業。
- ウケなかったこと:クーデターで大統領になったこと。独裁。軍事政権。過激な取り締まり。
- やらかしたこと:朴正煕以上の過激な独裁で市民を虐殺した。多数の市民を収容して過酷な強制労働を課した。その他多数のクーデター。
- その後:死刑判決→無期懲役に減刑 → (1997年: 8代大統領/金大中により)特赦 →大統領時代の不正蓄財に対する追徴(2013年) → 2021年没(90歳)
クーデターによって成り上がってきたバリバリの軍部系の激ヤバ大統領。
経済面では不況の韓国経済に日本から援助を引き出すなど良好な手腕。
ソウルオリンピックを誘致して、冷戦によってボイコットが相次ぐ東西両国を参加させたり国際的な存在感も示した。
他にも朝鮮戦争によって分断された離散家族の再会事業を行ったりした。ただこれはソウルオリンピックを中断させようとする北朝鮮が大韓航空機爆破事件を起こしたため潰えた。
ただ、挙げた良い点が霞んでしまうほどに独裁っぷりがやばく、それに反発する民主化運動も激しくなり、最終的には光州事件が勃発する。
光州事件の詳細は他に譲るが、概要としては韓国軍が市民を射撃したことによって154人(大本営発表)の死者を出した。
* … 大本営発表
ちなみに光州事件が起きたそもそものきっかけは民主化運動を進める野党主導者の金泳三(後の7代目大統領) / 金大中(後の8代目大統領)を逮捕したことによる。
そんなこんなで退任することになって、後任の6代目大統領 盧泰愚(ノ・テウ)に寺送りにされる。そして盧泰愚が退任した後に光州事件を初めとする諸々によって死刑判決(→減刑で無期懲役)を下されるが、前述した通り金大中によって特赦を受ける。
ちなみに全斗煥は大統領時代に、(後に特赦をくれた)金大中に死刑判決を出してたりもする。う〜〜〜ん……
【6代目】盧泰愚 / ノ・テウ
- 任期:1988年〜1993年(4年)
- どんな人?:全斗煥に後継として指名された人。の割に全然全斗煥に従わなかった人。
- ウケたこと:北朝鮮と南北基本合意書を交わした。ソ連・中国と国交を結んだ。従軍慰安婦問題を日本に持ち上げたこと。
- ウケなかったこと:弾圧、公権力の濫用
- やらかしたこと:不正蓄財が発覚。全斗煥大統領時代に光州事件を含む諸々に関わっていたこと
- その後:懲役17年→特赦。2021年、88歳没。国葬。
- 備考:この代から大統領は『任期5年、再選なし』になる
全斗煥と同様、軍部上がりの大統領。
全斗煥の後継として指名された人間だが、軍部上がりで共通点こそ多いものの、相違点も多い。
最も大きな違いは全斗煥はクーデター後に国会における間接投票で大統領になったものの、盧泰愚は国民投票の直接選挙で大統領に選出されたところだろうか。
選挙時の対立候補は後に大統領になる金泳三 / 金大中とかなりの大物。
今まで軍上がりが大統領になっていた反動で、文民あがりの金泳三 / 金大中は民衆からかなり支持を受けていた。しかも二人はそれまで民主化運動でトップを張っていたので、大統領を望む声は大きかった。
ではなぜ、あれだけやらかした全斗煥の後継が国民投票で選ばれたのか。
その理由は、そのかなり大きな対抗馬が同時に出馬しちゃったせい。票が割れたせいで 盧泰愚が当選を果たす。どっちか片方だけなら確実に当選してたのに……。
ただ、全斗煥のから後継として指名されたくせに全斗煥を排斥し、山寺送りにしたりした。なので軍部上がりの割にはかなり民主主義的な政治を行った。
退任後は全斗煥と共に光州事件に関わった責任を追求され、不正蓄財もあって懲役17年を言い渡される。2年後に特赦。
光州事件に関わったのは同じだが、全斗煥と違い積極的に反省をしていたり、また大統領時代は比較的善政だったりと韓国民からは比較的好感。
その違いは死去時にも現れており、盧泰愚は死去後に国葬されたが、全斗煥はされていない。
【7代目】 金泳三 / キム・ヨンサム
- 任期:1993〜1998年
- どんな人?:金大中と共に民主化運動に邁進してた人。初の文民出身大統領。
- ウケたこと:「任期中は献金を受け取らない」とクリーンな政治を貫いたこと。
- ウケなかったこと:経済が不況になりすぎて任期中にIMF経済危機を招いたこと
- やらかしたこと:本人はクリーンな政治を貫いたけど、親族が全然クリーンじゃなかった
- その後:教授職をやったりまぁまぁ普通に余生を送った。2015年死去、87歳没。国葬。
初の文民系大統領。民主化を維持し、本人自身も汚職を嫌悪していたことから親族がやらかしただけで本人自体は特に罪に問われていない。
ただ、任期中にIMF通過危機(*)が起きたせいで経済的な評価はかなり低い。
* … 事実上の財政破綻。国際通貨基金(IMF)からの支援・管理体制に移った
ただし、一概に金泳三のせいかと言われるとかなり評価は割れるらしく
「そもそも韓国そのものが慢性的に不況だった」
「アジア通貨危機の影響が大きかった」
という擁護意見もあることには留意する必要がある。
【8代目】金大中 / キム・デジュン
- 任期:1998年〜2003年
- どんな人?:金泳三と共に民主化運動に励んだ人(なお、党は違う)
- ウケたこと:IMF体制から脱却した。ITに積極投資した(今日の韓国のゲーマーの多さの礎を築いた)。南北首脳会談の実現(→ノーベル賞受賞)。日本文化を解放した。
- ウケなかったこと:北朝鮮に優しくしすぎたこと。
- やらかしたこと:本人はやらかしてないけど息子3人が受け取っちゃいけないお金を受け取りまくった
- その後:任期満了後、6年後の2009年に多臓器不全で死去。85歳没。国葬。
- 備考:韓国人初のノーベル平和賞受賞者
前任の金泳三とともに民主派運動を主導してきた経歴を持つ。
全斗煥から殺害未遂・拉致など色々ありつつも民主化運動を貫いてきた人なので金泳三と共に真っ当な政治を行った。けど息子たちがあかんかった。
かなりの穏健な政治体制で、北朝鮮にもいわゆる「太陽政策」を行った(北風と太陽になぞらえた、優しい政策)
それで南北首脳会談を実施したりした。けどその時の支援を行ったせいで「あの時支援したせいで北朝鮮が核開発に乗り出す体力を得てしまった」「あの時支援しなかったら北朝鮮潰せてたんじゃね?」などの批判点もある。
ただ20世紀初頭にしてITに積極投資したり、IMF危機から脱却したり、日本文化を解放(→韓流ブームの発生)など、今日に至る韓国経済の基礎を作り上げた点で経済的な評価は高い。
【9代目】盧武鉉 / ノ・ムヒョン
- 任期:2003年〜2008年
- どんな人?:ネット民にプッシュされまくって党の代表に選ばれたのち、当選した人。
- ウケたこと:庶民派だったこと。『過去史整理基本法』を制定したこと。日本とシャトル外交を始めたこと(途中で中断)。
- ウケなかったこと:庶民派すぎてなんもできんかった
- やらかしたこと:妻と息子が受け取っちゃいけないお金を受け取りまくった
- その後:任期満了後、妻・息子といった親族が逮捕される。自身も捜査対象になったのち、自死。2009年没。62歳。国民葬(国葬の一つ手前)
- 備考:韓国大統領で初の弾劾訴追案が可決される(ただし後に棄却)
金大中が推し進めたIT政策の中、ネット民に爆推しされたことによって党の代表になった人。
庶民派であることがウケて当選したが、庶民派すぎて大したことは何もできなかった。なんなら何もできないことを理由に弾劾訴追されて、本当に文字通り何もできない時期があった。
国内で最も評価されているのは『真実・和解のための過去史整理基本法』を制定したこと。文脈によって過去事法とか真実和解法とか色々な略され方をするのだが、要は「過去に遡って罪を精算しようぜ法」。
先述の光州事件(全斗煥 / 盧泰愚が関わった、軍隊が国民に銃を撃つ事件)を初めとするヤバめな出来事をしっかり検証して精算しようよ、という趣旨のものである。
全般的な評価としては、namuwikiの肯定的評価 / 否定的評価の見出しを見ればわかるが圧倒的に不評な点の方が多い。
とはいえ庶民派だったことや、大統領を務めたことを後悔しての自死などの悲劇性により、韓国民からの好感度は高い。
【10代目】李明博 / イ・ミョンバク
- 任期:2008年〜2013年
- どんな人?:零細企業に入社後に建て直して社長になったり、ソウル市長になって財政を建て直したりとバリバリの経済人
- ウケたこと:『747公約』を掲げて経済の立て直しを図ったこと
- ウケなかったこと:経済の立て直しがうまくいかなかったこと
- やらかしたこと:在任中には兄が逮捕。本人も収賄・横領で逮捕。
- その後:懲役17年の実刑→特赦で2年に減刑。2022年釈放。記事執筆時点で存命。
- 備考:韓国人初のノーベル平和賞受賞者
前述した通りバリバリの経済人で、747公約(経済成長率7% / 一人当たり国民所得4万ドル / 世界第7位の経済大国への引き上げ)を抱えて経済の立て直しを図ったが、どれも実現できなかった。
ただ、そもそも実現が難しい(公約あるあるとして誇張されてた側面がある)数値だったことも加えて、経済そのものは上向きになったよねという評価もあり、結果は賛否両論といった感じ。
在任中に「お前、私的な土地を政府の金で買ってね?」という疑惑があったり、任期後に「諸々の裏金を受け取ったりしたよね?」とのことで懲役17年の実刑判決が下される。2020年に収監され、2年後の2022年に特赦を得て自宅へ戻る。
【11代目】朴槿惠 / パク・クネ
- 任期:2013年〜2017年(在任4年・弾劾訴追によって罷免)
- どんな人?:韓国史上初の女性大統領。
韓国史上初の罷免された大統領 - ウケたこと:暗殺された3代目大統領『朴正煕』を父に持っていたバックストーリー。軍事面における強い姿勢。
- ウケなかったこと:軍・警察との繋がりが強すぎて民主主義の後退を招くような事態の連発。
「セウォル号沈没事故」での不手際。 - やらかしたこと:仲良しぴを国政に関わらせて、しかもそいつが収賄とかしてたこと(→ 崔順実ゲート事件)。自身も収賄・買収など。
- その後:罷免後、2021年に懲役20年確定→同年末に特赦で減刑
(釈放はされたが、大統領関係者に対する各種礼遇はほとんどを喪失)
第3代大統領である朴正煕(パク・チョンヒ)を父にもつ。朴正煕がそもそも軍事クーデターによって大統領になったこともあって、娘である朴槿恵も軍閥系。
軍事が絡む外交に関しては概ね評価を得ている模様(THAAD配備・KF-X開発再開など)。
ただ、軍との関係が強すぎて、選挙で韓国軍や警察を動員して世論捜査をしてたりした。
当選後も父ほど過激ではないものの軍・警察を使った文化人の監視とかメディアへの干渉とか、とにかく色々やった。
セウォル号沈没事故での不手際(事故発生後に空白の7時間発生、公式記録の改竄、不適切発言、記録の廃棄など)で支持率が急降下。
その後に朴槿恵の仲良しぴ(一般人)である崔順実(チェ・スンシル)が内政干渉したりついでにお金を集めてたりした事件(*)が発覚し、支持率0%を経て弾劾訴追が可決され罷免される。
* … 崔順実ゲート事件(namuwiki / wikipedia)
その後、懲役20年が確定するも、同年末に特赦を受けて解放される。今は表でちょくちょく活動している。
【12代目】文在寅 / ムン・ジェイン
- 任期:2017年〜2022年
- どんな人?:前任が罷免されたから、当選から移行期間なしの即大統領になるという選挙のせいで「こいつの大統領任期は何時上がりになる?!」とちょっとおもしろめな論争が起こった人。
- ウケたこと:コロナウイルスの対応が良かった
- ウケなかったこと:未成年がMinecraftを遊べないようになった(しかもコロナ禍に)
- やらかしたこと:特になし
- その後:任期満了後、田舎で本屋をやったりする
韓国大統領の中では唯一ちゃんと最初から最後まで大統領をやり遂げて、かつ実刑判決を受けるようなスキャンダルもなかった人。
本人が罪に問われなかっただけなら金泳三・金大中や、あるいはクーデターにより8ヶ月で退任を余儀なくされた崔圭夏などもいるが、とにかく真っ当にやり遂げて、真っ当に終わった人は文在寅のみ。
「退任後は忘れてほしい」という主張をしたが「てめーそんなこといいながらSNSで余生をアピールしてんじゃねえよ」という(比較的平和な)批判もある。
ちなみに未成年がMinecraftを遊べなくなった件は面白かったから書いたが、そもそも文在寅が直接指示したわけではなく昔からあった「未成年、オンラインゲームするの良くないよね」の規制の余波を受けた感じになる。ただ文在寅政権下で起きたことなので、批判は当然発生している。
また、この人の政治的行動を真面目に書くと結構荒れそうなので省いた(主に対日関係で)。詳しく知りたい人は各自で。
【13代目】尹錫悦 / ユン・ソンニョル
- 任期:2022年〜(2024/12/12時点で一応在任中。一応…)
- どんな人?:検察畑の出身で、文在寅の元で朴槿恵の崔順実ゲート事件を捜査した人。
- ウケたこと:日韓関係を改善した
- ウケなかったこと:アメリカとか日本に電撃的に「会談を開くぞ!」とやったこと
- やらかしたこと:妻が高級ブランドバッグを受け取っちゃったこと
→支持率が下がったからつい戒厳令を出しちゃったこと - その後:記事執筆時点で内乱罪の疑いで逮捕された。明日はどっちだ。
言わずと知れた渦中の大統領。
日本にはシャトル外交を再開したり、GSOMIAの破棄を撤回したり、その他経済協力したりと珍しく親日派だったりする(ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の軍拡など、世界情勢が悪すぎてせめて隣国の日本と仲良くしないとまずいという背景もある)
ただ妻がちょっと株価を操作したり、バッグを受け取っちゃったせいで支持率が急降下してしまう。なのでついつい戒厳令を発令してしまった。
結果は内乱の容疑で逮捕。
ちなみになぜ、韓国では戒厳令が特にヤバめな扱いを受けているのかというと
- 前回は3代目大統領:朴正煕がクーデターによって暗殺された際に発令された事実上の弾圧措置だったから(→この時に事実上の軍政となった)
- 発令時の宣言である「北朝鮮の共産勢力から国民を守るため」という文言はまさしく過去の(初代)李承晩、(3代目)朴正煕、(5代目)全斗煥が使ってきた「民主化運動を進めるあいつは、共産主義(北朝鮮)のスパイだ」という用法に重なるから。
というところがある。つまりガチ目のクーデター感がある(本人がどういう意図でやったのかはともかく)
ちなみに今後の予想としては(ここまで調べた私が感じるのは)おそらく無期懲役が確定した後そのうち特赦を受けるんじゃないかな〜という感じ。
まとめ
色々書いてきたが、まとめると以下のような感じ。
代 | 名 | その後 |
---|---|---|
1 | 李承晩 | 不正選挙→亡命 |
2 | 尹潽善 | クーデターにより辞任 (後に民主化運動中に反政府勢力として逮捕・実刑) |
3 | 朴正煕 | 側近により射殺 |
4 | 崔圭夏 | クーデターにより辞任するも特に何もなし |
5 | 全斗煥 | 武力弾圧及び不正蓄財を主とする実刑 (後に特赦) |
6 | 盧泰愚 | 武力弾圧及び不正蓄財を主とする実刑 (後に特赦) |
7 | 金泳三 | 親族が収賄で実刑 |
8 | 金大中 | 親族が収賄で実刑 |
9 | 盧武鉉 | 親族が収賄で実刑。本人は自死 |
10 | 李明博 | 収賄・横領で実刑 (後に特赦) |
11 | 朴槿惠 | 仲良しぴとともに収賄で実刑 (後に特赦) |
12 | 文在寅 | 田舎で本屋 |
13 | 尹錫悦 | 内乱容疑で逮捕(執筆時点) |
現在最終的な判決が固まっていない尹錫悦氏を含め13人中11人が大変なことになっている。割合にして85%。
パターンとしては以下の二つに分かれる。
- 6代目の盧泰愚氏くらいまでは戦乱の混乱を収めるために強権を発動しすぎ、やりすぎた結果裁かれる印象
- それ移行、文民政治に移行してからは純粋な汚職による刑事罰の印象
また、基本的に前任の大統領がスキャンダルバレしてるところからスタートしてるので、前任を追求することが仕事になりやすい(支持率も上がるし)
同じ大統領制なのにアメリカと比べるとなぜそんなに……?と思うこともあるだろうけど、前述した儒教文化のせいでコネ文化がめちゃくちゃに強く、さらにアメリカの大統領より全般的に権限が大きい(→戦時下だから!)というところが大きいんだと思う。
ただ基本的には懲役刑の途中で、その時の大統領により特赦が下されているので「ちょっと反省したら出てきてね」という流れが出来上がっているのだと思う。
まぁ本当に厳しすぎたら誰もやりたがらないだろうし、自分がやらかした時もそういう流れがあると嬉しいだろうし、というのは私の穿った見方です。
終わりに
各種Wikipediaのページと、namuwiki(日本語ページ)にお世話になりました。
それ以上に大統領を殺す国 韓国(著:辺 真一 氏)にはめちゃくちゃお世話になりました。2014年発行で10年前と結構前のものですが、〜李明博大統領くらいまでがわかりやすく解説されています(発売時には朴槿恵氏が大統領)この記事より更に掘り下げたいと思われた方には一読の価値があります。