夕鬼をトロコンしたのでレビュー。面白かったです。
夕鬼とは
「ねぇ、夕鬼、しよう?」
その一言とともに、少女は夕焼けに染まった異世界に連れ去られた――。
という感じで学校・病院・古い日本家屋で構成されたマップを探索していくゲームです。全5ステージ。
ゲームの大きな流れとしては『ノベルパート(ストーリー)』→『アドベンチャーパート』の2つで構成される。
ノベルパートでは怪奇「少年ツン」に巻き込まれた主人公含む6人の少年少女と、なんでも願いを叶えてくれるツンと狂っていく仲間たちの話を追いかけていく。
アドベンチャーパートは前半と後半でゲーム性が大きく異なる。前半がかくれんぼパートで、後半は鬼ごっこパートといったところだろう。
かくれんぼパートは3種類の敵から隠れながら進み、ステージ最奥の人形を取ることでゴールとなる。
それぞれの敵は耳がいいか目がいいか、もしくは耳と目がそれなりにいいかの3パターン。息を止めてゆっくり進むか、ダッシュで一気に進むか、移動ルートを見極めて選択していくことになる。
そこから後半が始まり、なんかよくわからん目玉の化け物が追いかけてくるので全力でスタート地点まで逃げ切るパートになる。
良かったところ
このゲームはホラーゲームながら、怖すぎないというのは本当に良かったと思う。というのも以前レビューしたシャドーコリドーなんかは難易度もあるが怖すぎてトロコンするまで結構時間がかかった。ブログには書いてないがVisageというゲームは怖すぎて投げた。
その点、このゲームは本当に怖くもあるが怖すぎないバランスの良いゲームだった。先の気になるストーリーに、絶妙に投げ出さない程度の怖さでクリアまで時間が大して時間がかからず助かったと思う。
ゲーム部分の雰囲気は良く、ただただ歩くだけで怖いのだ。
実際マップ中に配置されている敵は対処法さえわかっていて冷静に行動することができればなんてことはない。なんてことはないはずなのだが、それでも怖い。
ジャンプスケア(ホラー作品によくある「バーン!!」ってなって急に場面転換!するやつ)というのもほとんどない。
あくまで雰囲気で勝負、静かにビビらせるぜという良い和風ホラー感が出ていたと思う。
各ステージは初見ならゆっくりで1時間程度、サクサク進めることができれば30分ほどでクリアできるくらいのボリューム。それが全部で5ステージあり、1度クリアすると魔界村よろしく裏ステージなる2周目に進む。
この2周目では各ステージにアーカイブが追加される。閲覧することで1周目のストーリーの裏側を見ることができ、さらにエンディングも変化する。
これがいい塩梅で、1周目をプレイしてエンディングを見た上で、それらのアーカイブを見ることによってまったく違った印象のストーリーとなる。本当にこの構成は上手で、飽きずにストーリーを楽しむことができた。
ストーリーもこれまた良質で、量的にはアドベンチャーパートよりも圧倒的に少ないのにかなり綺麗にまとまっている。
ストーリーは2周目と1周目で違うが、選択肢が増えるとかそういうのではなく1週目のIFルートと言った感じ。
2000円台のインディーゲームにしてはかなり良質なものだったように思う。
気になったところ
しかし気になるところもいくつかあった。
まず前述の2周目だが、こちらはノベルパート(ストーリー)への変化が大きく新鮮な気持ちで読んでいくことができる反面、アドベンチャーパートはほとんど変化がない。
1種類だけ敵の種類が増えるものの、各ステージに1〜2匹程度しか増えないのでそこまで変わることもない。
また、後半のステージにいくに連れてマップが複雑になり迷う場面がでてくる。
2周目ではステージ各所に散らばるアーカイブを集めないと、後半の鬼ごっこパートへ移動するための人形を取ることができない。
つまりアーカイブを集める行為は必須なのだが、最終ステージでは迷いに迷って30分以上ぐるぐるマップを走り回ってアーカイブを探すというちょっと苦痛な場面があった。
これに関しては迷う自分が悪いのだが、部屋間の分岐が多いわりに扉が全部同じ素材だったりするのも遠からず一因だと思う。
せっかくノーマル・ハードという難易度選択があるならここにイージーを追加してミニマップでも表示してくれていいんじゃないかとは思った。
また、ジャンプスケア(音と急なシーン転換でビビらせてくるやつ)はほとんどないと書いたが、まったくないというわけではない。
ステージ中に各登場人物のフラッシュバックが再生されることがあるのだが、これがマジで急で音がでかくてびびるのだ。
フラッシュバックの内容自体はまったく怖くない。そのため開発者にビビらせる意図があるかはわからないが、とにかく初見はビビる。
例えるならおばけ屋敷でビクビクしながら歩いていたら後ろを歩いている幼馴染(♀)が「わっ!!!」と脅かしてきて「えへへ〜びっくりした?」というおばけ屋敷とは無関係のところでビビるみたいな感じ。問題はビビらせてくるのが幼馴染(♀)ではないということだ。
せっかく雰囲気で勝負するいいゲームなのに、こういう要素があるとそれだけで気力を一気に持っていかれてしまう。ビビらせる意図がないならもうちょっと穏やかにシーンを見せて欲しい。これ以外にジャンプスケアはないので、本当に惜しい印象だ。
細かいことを言えばPS5メニュー上での待機音楽がうるさいとか、なんかUnityが最適化できてないのかたまにではあるが30FPSほどに落ちる場面があったり、各プラットフォーム上での調整不足が目立つ印象であった。
総評
低価格のインディーゲームで価格相当のボリュームはあり、価格以上の質があるといったところ。
ホラーゲームとしては正統派で雰囲気で勝負してくる感じ。
かといって怖すぎるということもないのでカジュアルに楽しみたい人にはオススメ。
ストーリーも先が気になる展開で、淡い青春ものというかなんというか、このストレスが多い現実世界でもなんとか頑張って行こうかなというか、そんな気にさせられるようなオチで良かった。
ストーリーも1周目と2周目でそれぞれ楽しめ、1周目があるからこそ2周目がもっと面白く感じる作りでとても良かった。
反面、アドベンチャーパートの2周目は内容が1周目と大して変わらないので少し作業感が強めだったように感じた。
それを差し引いてもやっぱり面白く、良いゲームだったと思う。
こういうゲームが2000円で買える時代に感謝したいし、2000円で買えるのでぜひホラーゲームが苦手な人もプレイして欲しい。そう思えるゲームでした。