Papers, Pleaseをプレイしたらこの世の地獄を味わった

Papers, Please とは

1982年を舞台に架空の共産主義国アルストツカの国境にて入国審査をするゲーム。

Papers, Please(「書類ください」)のタイトル通り、入国希望者からパスポートや入国許可証と言った書類をもらい、それら書類に不備や偽造がないかを確認していくゲーム。

本当にゲーム内容はこれだけだけど、シンプル故の静かに楽しいゲームです。

今日も労働に勤しもう

プレイヤーは食費と暖房費、家賃を稼ぐために休みなしで毎日労働しなければならない。息子や妻、義両親や場合によっては姪っ子と言った家族を養っていく必要がある。

とは言えゲーム自体はシンプルで入国希望者から書類をもらいひたすらに捌いていくだけ。

あの……提出書類の名前違うんですけど
あの……提出書類の名前違うんですけど

ただこの入国審査のルールが多いんだわ!ルールが必要なのはわかるんだけど、上の人間は現場のことなんか知らずにルールばっかり追加していくんだわ!

書かれてる規則は当たり前でまぁまぁ納得できる内容だけど、入国者がまともにルールを守ってくれるかも別問題。

こいつは有効期限切れてる……。こいつは入国許可証を提示してこない、お客さん、入国には入国許可証が必要なんですよ。え、あぁ持ってる?じゃあそれ出して。って入国許可証とパスポートのIDが一致しねえじゃねえか!逮捕だ逮捕!

こんな調子で、体感では5〜8割くらいが入国拒否か逮捕になる。うーん、こんな革命の気配漂うやばそうな国にお前らそうまでして入国したいのか?

働くって尊い

このゲーム、基本的にはマウス操作のみで完結する(アップグレードすればキーボードによるショートカットも使えるが、マウス操作だけで完結した方がプレイヤーの混乱は少ない……)

なので頬杖つきながら片手でマウスをぽちぽちしながらプレイするのに非常に向いている。このスタイル……ただの事務仕事では?

基本的には入国希望者外提出する書類を確認し、規則に沿って入国審査を行なっていく。審査といっても書類の目視確認が基本で、書類の偽造チェックだったり人種による対応だったり。

あの……指名手配されてるんですけど……
あの……指名手配されてるんですけど……

規則は毎日のように変化し、増えていく。先日まで戦争していた隣国のコレチア人は入国拒否しろ。コレチア人は入国可能にするがテロ密輸を防ぐため全員検査しろ。コレチア政府から苦情が来たため検査はするな。合衆国はポリオウイルスが蔓延してるから入国させるな。全入国希望者のうちポリオのワクチン接種履歴があるやつだけ入国させろ……etc。

要求する書類が変われば、チェックする項目も変わるのでわりと飽きずにプレイできる。

ワクチン未接種の方は入国できません
ワクチン未接種の方は入国できません

働いていると色々な物語がある。夫婦で移住しようとするのに夫しか入国に必要な書類を持ってないとか、殺された娘の仇を追うために殺人犯を追いかけてる人とか。

結局そういう人間にどういう態度を取るかは人による。

でも幸いなことに、このゲームは1日のうち数度のミスは(故意であれ過失であれ)ペナルティがない。なのでそう言う人間にどう対処するかは純粋に自分の気持ちに寄る。そこはいいゲームだな〜って思った。

人の醜さを知る

入国希望者は前述したとおり、半数以上弾くことになる。なんでみんなそんな書類偽造するの…?

しかも規則は変わっていくし、必要な書類も変わっていく。昨日と今日で入国に必要な書類は違うのだ!

そして規則に合わせて業務は増えていく。書類偽造は拘束しろ。指名手配犯は拘束しろ。自国民の○○区出身者のパスポートは押収しろ。テロを行いそうなものが現れたらライフルで対処しろ……etc

最後のやつだけ責任の範囲が入国管理超えてねぇ?と思うが、とにもかくにも上の連中は現場の大変さなんか知らずにルールばっか追加してくる。現代社会の縮図だぁ……。

それでも毎日家族を養わなければならないのでどんなに規則がめんどくさくなっても文句を言わずにせこせこと働くしかない。

己の醜さを知る

審査におけるある程度のミスはペナルティがない。何回もミスを重ねると罰金になってしまうが、過剰にミスを心配する必要はない。

この場合のミスとは純粋な間違いも故意も区別しない。つまり……通してはいけないやつを通したり、通していいやつを防いだりしてもペナルティはない。

さて、我らがアルストツカは共産主義国であるが、ここ入国管理局では歩合制を採用している。一人の審査あたって5クレジットもらえるわけだ。

書類不備を故意に通すことに意味はない——が、故意に通しても何回かは怒られない。

——書類が整ってないやつが「これで通してくれないか?」と袖の下を渡してきたらどうだろうか。

仮にもう罰金が発生するほどミスを重ねてたとしても、通した方が美味しい。罰金よりも賄賂が大きいから。

仕方ない——これも家族を養うためなのだ。

そしてそういう賄賂を何度も受け取ったり、賄賂を持たない不正者を弾いたりしていると、ある思想が芽生えてくる。

「書類も賄賂も持ってねえ奴が国境を通過しようとするんじゃねえ!」

入国監査官の初日は「よーしこれから不正に入国するやつを防いでお国に貢献するぞー!」と意気込んでいたのだが、気づけば自分が不正に加担していた……!それもこれも生活が苦しいのがしょうがない。アルストツカの冬は厳しい。

知り合いの奥さん(書類不備)を不法入国させた話
知り合いの奥さん(書類不備)を不法入国させた話

見返りなどなくとも知り合いの不法入国に手を貸すこともある。生活を守るため、明日に希望を抱くために革命勢力に手を貸すこともある。

書類偽造者に苛立ちを覚える一方、賄賂には甘かったり、自分の人情で不正入国させたり……このゲームは単純作業の一方で自分の心情や考え方を露わにしてくる。

と言うか素で「入国したいなら賄賂持ってこいや!」と思った時には自分にびっくりした。始めたてのときはあんなに「不正はゆるさないぞー!」と意気込んでたのに……。

総評

このゲームは一言で言うと間違い探しなのだが、もっと広く言うなら「コツコツした繰り返し作業」が好きな人は間違いなくハマる。クッキークリッカーとかで時間を無為にした人はこのゲームで事務作業しよう。

間違い探しなので難しく考える必要はないんだけど、繰り返し作業が苦じゃない人には地味な作業が楽しい。

ストーリーは味わい深いということはないのだけれど、革命組織に付き合うとか、汚職には一切手を染めないとかそういう自分の決断によって決まっていくので飽きずに、次はどうなるんだろうな〜とコツコツ作業の中のスパイスになってくる。

ストーリーもそうだが、このゲームは常に決断が求められる。

手続き書類に不備があれば指摘して入国拒否でいいのだけれど、不備が見当たらないときは「本当にこいつに不備はないのか……?」と疑いながら入国許可をすることになる。一つ一つの作業に責任を求められるって大変。

逆に2週目なんかだと、スッ……スッ……といいペースで入国審査が進められる。自分の成長を実感しやすいゲームでもある。

派手なアクションやストーリーとかはないけれど、何か暇だけど頭使うゲームはな〜と思うときにはうってつけのゲーム。

Papers, PleaseはSwitchやSteamで配信中です。

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